税理士だからこそ言える本音の話。【退職の手続き編】

従業員が会社を退職する場合の会社の事務手続き等

従業員から退職の意向を受けた場合

 従業員から退職の意向を聞いたときは、驚きや戸惑い、失望など様々な感情が湧いてくるかもしれません。しかし、初めに発する言葉が従業員の記憶に一番残ることを覚えておきましょう。

 従業員は退職までに悩みに悩み、苦渋の選択をした結果の退職なのものかもしれません。
 家庭の事情、健康上の理由、または仕事の内容や環境への不満からこのような結論に達したのかもしれませんが、感情に任せず、まずは、相手の立場になって、理由を冷静に尋ねましょう。

 退職を受入れる場合は、円満退職をお互いに心がけ、引き留める場合は、理由を聞き、話し合いをして従業員が残れる環境を作り、仕事内容の変更等を一緒に考えましょう。
 会社にとって一番大切なのは、退職者との関係を壊さないことです。

 福岡の税理士事務所で勤務時代、顧問先様で急遽人手が欲しいときに、過去の退職者が手伝いに駆けつけてくれたことがありました。円満退職は、双方にとって良いことですので、最後はお互いに「ありがとう。」と言える関係になりたいものです。

退職が決まったら

 残念ながら従業員の退職が決まってしまったら、必ず業務の引継ぎについて打合せをします。業務を引き継ぐに際し、求人を出し新しく雇用する人なのか、在職中の従業員なのかによっても引継期間は異なりますし、必要な費用も異なります。

 求人方法もハローワークなどの公的機関を利用する場合だと費用は掛からない場合がありますが、早急に特別なスキルを求めるなら求人サイトへ登録、紹介会社へ依頼をします。
 一般的に人材の紹介手数料は、雇用する人の年収の2~3割が相場のようです。

 どのような形にしても、取引先への対応や業務遂行を円滑に進めるために、退職者に協力を求め、引継ぎを最後までしっかりとしてもらえるようにしましょう。

退職者から返却を受けるもの

 退職者から返却を受けなければならないもののリストを事前に作成しておくことをおすすめします。

  • 備品
     制服・制帽・会社が貸与していたもの

  •  会社のセキュリティーカードや各所のカギなどは防犯上必ず確認し漏れの無いようにしてください。
  • 名刺
     不要な場合は、会社でシュレッダー等にかけておきましょう。
  • 保険証
     保険証は、扶養家族の分も返却してもらう必要があります。

退職者から提出を受けるもの

  • 退職願
  • 退職金の支払いがある場合には「退職所得の受給に関する申告書」
     「退職所得の需給に関する申告書」の用紙は、国税庁のホームページから取得が可能です。
     退職金は在職期間に応じて退職所得控除額があり、その上所得金額の1/2に税率を乗じて所得税、住民税を計算します。

 他の所得に比べかなりの優遇がありますので、必ずこの用紙を退職者に記入提出してもらいます。
 もし、この用紙の提出がない場合には退職金額に20.42%の所得税、10%の住民税が課され、退職者本人が確定申告により税金の精算を行うこととなります。
 また、税金の徴収義務及び納付義務があるのは会社側になりますので、注意が必要です。

会社がする手続き等

  • 社会保険の資格喪失手続き
  • 雇用保険の資格喪失手続き
  • 住民税の手続き
  • 退職所得の受給に関する申告書の記入・保管
  • 退職金に係る所得税・住民税がある場合には納付
  • 離職票・雇用保険被保険者証を退職者へ渡す
  • 源泉徴収票(給与分、退職金分)を退職者へ渡す
  • 年金手帳を預かっていた場合には返却
  • その他に退職者から提出を求められたものに対応

従業員が会社を退職する場合の退職者の事務手続き等

退職することをいつまでに伝えるのか

 労働基準法では、特に労働者が退職の意思表示をいつまでに会社に伝えなければならないと規定はないものの、民法では期間の定めのない雇用契約については退職の意思の通知後2週間を経過したときに、その雇用契約は解除されることとなっています。
 しかし、会社の就業規則にいつまでに申し出ることの規定があるときは、それに従わなければならないため、事前に確認しておきましょう。

退職届の提出

 退職届は一般的に退職する旨を会社へ申し出た後、引継ぎのスケジュールや後任の話し合いをし、会社から了承を受けて退職日を決定してから提出するのが理想です。
 一方的に退職日を決めて提出するのは、円満退職を望むのであれば避けた方が良いでしょう。

退職するときに会社へ提出するもの

 退職時には身の回りの整理整頓するのは当然のこと、 次のようなものは会社へ返還することを忘れないようにしましょう。

  • 保険証
  • 制服・制帽・会社から貸与されていたもの
  • 社員証
  • 定期券などは会社と相談する
  • 名刺
  • 会社やロッカーの鍵等
  • その他、会社所有の物

 上記以外に、退職金の支給を受ける場合には必ず「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。通常、会社から用紙を受け取り記入しますが、提出を求められなかった場合は会社に尋ねましょう。
 この「退職所得の需給に関する申告書」を提出することで退職金に係る税金面で大きな優遇措置を受けることができるものとなっています。
 その優遇措置とは「給与の仕組み」の「退職時の給与について知る」に記載している勤続年数に応じた退職所得控除額を控除して1/2を乗じた金額に税率をかけて所得税、住民税が計算されると言うものです。

 しかし、この「退職所得の需給に関する申告書」の提出がなかった場合には、退職金額に20.42%を乗じた所得税と10%を乗じた住民税を支給時に天引きされ、その後、受け取った源泉徴収票を基にご自身で確定申告をして税金の精算を行う必要がありますので注意しましょう。

 退職金は長年の勤労に対する報償的給与が一時に支払われるものと考えられており、控除額が大きく、個人所得税において優遇された特別なものであると言えます。

住民税、健康保険料、国民年金の納付

 まず、退職時期によって残り期間分の住民税が一括して最後の給料から天引きされる場合と、残り期間分について普通徴収(市役所等から納付書が後に送付されて、自分で金融機関に行き納付する方法)があります。どちらの方法によるのかは会社に確認しておきましょう。退職時期によっては天引きと普通徴収と選ぶことができます。
 また、健康保険料は国民健康保険に切り替えるのか、任意継続にするべきか迷った時には会社または役場に行き相談することが確実です。
 退職後は国民年金への加入等も忘れずに行います。

雇用保険について

 雇用保険加入者は、雇用形態や年齢、退職理由よって雇用保険から支給される失業等給付金の額や支給開始日等が異なりますが、自分で住所地のハローワークで手続きを行う必要がありますので確認しましょう。