税理士だからこそ言える本音の話。【人材不足編】

人材不足が最大の悩みにならない為の心がけ

1.今後、経営者を悩ませる問題

 平成30年国会で多く議論され、賛否両論あった外国人労働者の受け入れ拡大は、私たちの業界や顧問先様に、改めて今後のさらなる人材不足問題を突きつける内容でした。実際、毎月顧問先様とお会いした時には、「人が見つからないんだよね。」というワードをよく聞きました。

 社長様の顔を見た瞬間、履歴書届いていますか?とお尋ねしたり、私自ら友達や親せきに就活している人はいないか連絡をしたりと、約10年前のリーマンショック後には考えられない状態となっています。

 本来なら、会社経営者として今後の展開に頭を悩ませたいところでしょうが、多くの経営者を悩ませているのが人材不足であることは事実です。
では、この10年で何があったのでしょうか?

 もちろん日本経済の回復があり元気な会社が増えたこと、実際日本の人口がどんどん減少していること、団塊世代の引退時期であること、以前は無かった様々な収入を得る手段ができたこと(例えばブロガーさんやユーチューバーさん等)、たくさんの要因が考えられます。その原因が多岐にわたることから、何かを改善したら人材不足問題が解決するわけではなく、原因究明よりも少しでも早く対策を考える事が必要です。

2.従業員さんが定着しない悩み

 まず、1番大切なのは今いる従業員さんが退職しないことが大切です。新しい人材を探すのには大変なエナルギーが必要です。求人情報誌に掲載したり、人材紹介を受けたりするにも経費が掛かります。面接、新人教育に時間も掛かります。経費、時間、心労と、もっと会社の経営に使えたものが、従業員さんの退職によって失われてしまいます。

 例えば、「当社の従業員の定着率が良くない。」と悩まれている社長様がいるとします。判断を間違えないために考えるべき事の代表例を紹介します。

① 会社全体の定着率が良くないのか、特別な部署だけ良くないのか?
② いつと比べて良くないのか、いつから良くないのか?
③ 男女で差があるのか?年齢で差があるのか?
④ 一年間で退職者が多く出る時期があるのか?

 上記のように、定着率と言っても枠組みが大きすぎると対処する内容が明確にはなりません。どんどん問題点に近づくために、細かく分けて考えていくと原因にたどり着くことができます。(会社経営と同じです)

 退職理由は、新しい世界に飛び込むため、出産子育て、家族の転勤、お給料の不満、体調面、勤務時間、介護など本当に多岐にわたります。本当にどうしようもない理由で退職してしまうのは仕方が無いでしょうが、会社経営者の考え方や働く環境等の変化で退職せずに済む場合も多くあります。

 いい人材はどこにいるのか?と外ばかり探すのではなく、いい人材は当社にいるという事を認識しましょう。

 そこに居ることが当たり前と思ってしまったら人は甘えてしまって、なかなか大切にできなくなってしまいます。せっかく当社と出会ってくれて、選び選ばれ働いてくれている今の従業員さんに今一度目を向けてください。
「おかげさま」という気持ちをいつも持っていたいものですね。

3.経営者と従業員

 この記事を読んでくださっている方は、会社経営者や今から起業しようとしている人が大半だと思いますので、経営者側からのお話をいたします。

 社長様と従業員さんは当たり前ですが対等ではありません。社長様には大きな責任があり、従業員さんやその家族の生活を支え、取引先の経営にも影響を与える立場で、会社のかじ取りをしています。
仕事の内容も、お給料の額も、何もかも違います。でも、一緒なのは会社の発展を願うという部分であるべきです。

 従業員さんが自社に愛着がないと、同じお給料、同じ地域、同じ環境の会社が数社あった時、他に移ることは当然起こります。ここで働く理由として、条件だけでないソフト面での付加価値が必要なのです。

 そこで必要なのは、感謝や尊敬の気持ちです。経営者側は勤めてくれて感謝、従業員さんは勤めさせてくれて感謝という気持ちを持つこと、一方通行ではいい会社にはなりません。

 言葉で伝えることも必要でしょうが、目は口ほどにものを言う。と言われるように人は敏感です。心のこもっていない言葉は見透かされてしまうでしょう。お給料はあくまで仕事の対価として支払っているものですので、等価交換の考えからどちらが上・下は無いのです。

 今後、従業員さんに愛されない会社は本当に厳しい時代になります。敏腕社長だけいれば成り立つ業種なら良いですが、従業員さんの後ろには多くのお客様の顔を思い浮かべて接してほしいと思います。

4.いつ従業員さんを増員するのか?

 先日、顧問先様から「今度、知人から紹介を受けた人を面接しようと思います。」と報告を受けました。経費は、大きく変動費と固定費に分かれており、変動費は売上が増えれば同じように増える経費のことを言い、材料代、商品仕入れ代のようなもので、固定費は 売上の増減によってあまり増減しない家賃、減価償却費、事務所の水道光熱費のようなものを指します。

 お給料は固定費に分類され、一般的に売上の影響を受けず毎月支払わないといけない経費です。売上が減ったので今月のお給料は減額します。と言うのは、歩合制や他の理由によるところが無ければ通用しません。

 そう考えると、顧問先様に増員しましょうと言うべきか、どうか考えてしまいます。しかし、その顧問先様は明確な理由があって増員を希望していましたので、私としてもいい出会いになることを願っていることをお伝えしました。
今は、増員して固定費が増えるのは正直辛いが、増えたことによって次の展開に進み売り上げを伸ばす計画で、売上が増えたので増員と言うのでは、その時に人が見つかるか、そのめぐってきた仕事を受けることがきるマンパワーがその時点でそろっているのかは不明です。

 売上が先か、給与が先かは経営者や会社の方針によって違います。給与が先行することのリスクはもちろんありますので、必ず顧問税理士と常日頃からコミュニケーションを取り、考え方を共有して、今、未来にとって自社に必要なものはどちらなのかを一緒に考える事が重要です。

5.人材不足による倒産の危機

 以前より黒字倒産という言葉があります。会社としては利益が出ているのに会社倒産してしまう現象です。通常考えると、利益が出ている会社が倒産することは矛盾しているように思いますが、実際にあります。

 黒字倒産とは、簡単に言うと資金繰りの悪化による倒産です。起業した時又は設備投資などの理由により銀行等から借り入れをして、その借入金で仕入をしたり機械を購入したりと支払いに使用します。

 その後、借入金の返済が始まりますが、会社の経費になるのは利息部分だけであって、元本の返済金額は単なる借りていたものを返すための出金として扱われます。
現金が減少するが経費にはならない、ここで利益金額と現金残高にズレが生じてしまうのです。

 利益が出れば当然、税金の納付があります。しかし、思うように売上が伸びなかったことにより現金が足りないという場合も出てきます。

 また、売上代金の回収期間が、仕入代金の支払い期間より遅かったり、得意先から回収ができなかったりすることで資金繰りが悪化することも考えられます。
黒字倒産は、試算表のうち損益計算書ばかりを注目して、貸借対照表を重要視していなかったことによる結果なのです。

 私は、いつも顧問先様に損益計算書は過去の成績表、貸借対照表は未来の表なので必ずじっくり両方見てください。とお話しします。重要なのは、どれだけ利益が出ているのかと、会社の体力がどのぐらいあるのか両方なのです。

 そして、今後考えられるもう一つの倒産理由は人材不足倒産です。倒産までいかなくても支店を閉じたり、会社規模を縮小したりすることになるかもしれません。
人材をPC、AIで賄うことが可能だったらまだいいのですが、それにも設備投資が必要ですし、人でなければできない仕事もまだまだあります。

 人材の奪い合い時代がますます激しくなってくるのは、誰もが感じていることなので、今からできることを始めないと、気づいたときにはもう遅いのです。人は財産と考えるなら、「人財」としてもいいぐらいの大切なものです。

 学生時代に講師から、「成功している会社は従業員から愛されている会社だよ」と言われたことがあります。
たくさんの企業様と一緒にお仕事させていただいて、この言葉の意味を本質から感じ納得しています。

 ぜひ、将来人材不足で悩まないように、自社の従業員さんについて考える時間を今から持って、貴社の発展を一緒に目指す仲間になってもらいましょう。